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・正体に関する仮説

                    

 かれらが分類上、どういった生物であるかについては、Atmospheric beastsをはじめとする同じ不可視生物たちとの関連性が分からない以上、明確にその正体を断定することは難しい。現時点でのかれらの正体に関する仮説としては以下のようなものが存在する。

 ①未知の無脊椎動物

不可視の能力を有した無脊椎動物をその正体とする説。主な説としてナメクジをはじめとする軟体動物、陸に進出したヒトデなどの棘皮動物など。拓本に記録された外見上の特徴、および壁に貼りつくことができるという能力をもとに仮定されたものである。

 

 ②魚類説

陸上に進出することとなった魚類そのものであるとする説。やや非現実的なものではあるが、しかしヒラメなどの例を考えれば扁平な魚類という存在は実在性が高い。研究史の項

で述べた、「分子構造を透過し、半身だけをこちらにのぞかせる存在」という説と関連付けられる場合もある(この場合、現在「壁目」と呼ばれる器官は実際には本来の眼球である)

 

 ③Atmospheric beasts変種説

同じ不可視生物であることから、Atmospheric beasts、ひいてはその他の第1群不可視生物と同様の動物門に位置するという説。Footprints、Tsukumoなどの不可視生物は一様に扁平な姿をとり、質感擬態を行うことからWallfishと近縁な存在であるという可能性は高い。一方でほかの動物たちに見られるように、まったく異なる動物たちが収斂進化等により同様の能力を持つに至った可能性についても否定できない。

 

 正体に関する議論とはほぼ関わりはないが、中世ヨーロッパにおいては海に存在するものは陸にも、また陸に存在するものは海にも存在するものと信じられてきた。当時の博物画などをみると、「海の馬」や「海の葡萄」といったものに関する記述を見ることが可能である。Wallfishたちは陸上の壁に発生する、魚に似た生物という点で、こうした理論を体現するような生物である、と考えることも可能なのである。

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