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・正体に関する考察

 Tsukumoの正体については、これまでの項で述べたように、細かな無数の群体から構成される生物であるとする説と、非常に扁平な体を持つ一個体の生物である、とする説とに大きく説が二分した状態にある。群体とする説では、その正体をカビやキノコといった菌類の繁殖した姿であると考える者が多い。ただし、Tsukumoの体は明らかに多様な形状・質感のパーツから構成されていることから、所謂キノコなどの子実体、あるいはクダクラゲやサルパのような分化を行う存在である可能性が挙げられている。一方で、かれらの正体をこうした通常海生の群体生物が陸上に進出したものであると唱える研究者も存在する。一見、ややあり得ない説ではあるが、同じ第1群不可視生物である「Atmospheric beasts」や「Wallfish」などについてはそうした説が有力なものとして扱われている点を考えれば、その可能性も全くないとは言い切れない。

扁平生物説については、その正体となる生物は特定できていない。アメーバのような粘体上の生物や、プラナリア、あるいは海生生物のヒラムシといった扁形動物に近い存在であるとの説が存在するものの、いずれもその根拠に乏しい状態にあるといえる。別な説としては、この生物をWallfish、ないしFootprintsと近い関係にある存在であるとするものがある。どちらも扁平的な体を持ち、程度の差こそあれ「質感擬態」の能力を有することからも、かれらが近縁な存在である可能性は非常に高いように思われる。ただし、かれらの詳細な研究が行われていない以上、かれらの持つ特徴が平行進化の結果によるものであり、それぞれが全く異なる生物である可能性が依然存在するということは留意すべきである。

Tsukumoと、こうしたほかの不可視生物との関連性をさらに考えると、Wallfishの壁目より放たれる「視線」は、ごく一部の人であれば感じ取ることができるとされており、そのことが「誰もいないはずなのに、どこからか視線を感じる」という、怪談において比較的ポピュラーな現象の基となったのではないか、と考えられている。

一方で、Tsukumoが関連していると考えられている付喪神や器物の会に関する伝承を見てみると、「目目連」という怪異の存在がある。これは障子の「目」に現れる眼球の怪異であり、まさしく「何者かに見られる」「付喪神系」の怪異、とみることが可能である。これについては、障子の目を主な寄生先に選ぶTsukumoをその正体として考える向きが多いが、一方「何者かに見られる」という特徴から、例えば障子などの紙で出来た壁面を好むWallfishであると仮定することもできる。Wallfishには種ごとに様々な壁面を生息地として好む傾向があることが知られている。このことと「種ごとに様々な器物を生息地として好む」Tsukumoの性格とは似ているように感じないだろうか。2種が同様の生物を先祖に持ち、自由に壁面上を歩き回ることで繁殖していく「Wakkfish」と、器物といういわば「封鎖・完結された壁面」を生息地に選び、その寄生先の移動などを基に繁殖行動を行う「Tsukumo」とに枝分かれしていった可能性も大いに考えられるのである。

 

 

・「Mokumokuren」は、その名の通り目目連の正体とされる障子の「目」を寄生先に選ぶTsukumoである。このような「部分寄生」型の種は、壁面を「生息域」とするWallfishと、器物の表面=小さな壁面を「住処」とするTsukumoとの中間的な位置に存在するものであるととらえることもできる。右はWallfishの一つである「Tentacle long neck」であるが、本種もまた、障子の目のような「囲まれた壁面」を好む習性がある。

 

 

・TsukumoとWallfishとの生息地における比較。Atmospheric beastsとFootprintsが近縁的に語られることと対になるように、TsukumoとWallfishの間に何らかの関係性があると考える研究者は多い。

​Wallfish

​Wallfish(壁面としての物品)

​Tsukumo(部分寄生種)

​Tsukumo

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