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・研究史

Footprintsもまた、他の不可視生物同様Atmospheric beastsの研究より派生して発見されることとなった存在の一つである。その発端は未確認生物研究家、C.ロフト氏が我々に提供した、極東における陸生頭足類にまつわる情報にさかのぼる。氏の提供したそれは我々によるAtmospheric beastsの発表に対して行われたもので、低空飛行を行う未知のAtmospheric beastsの発見を期待してのものであった。我々もまた、「イモヌスミ」と呼ばれるその頭足類と思しき生物をそうした存在として調査を行っていたが、当生物の「可視点」は非常にいびつなものであり、かつ従来の捕獲方法によっても決して捕獲することのできない奇妙な存在であり、Atmospheric beastsの研究者を悩ませていた。

 そのような中、ある時極東の畑にてイモヌスミの追跡を行っていた研究員が、その周囲の地面に奇妙な円状の窪みが存在していることに気付いたのである。それはタコの吸盤のように並んだ、イモヌスミの「足跡」とでもいうべき存在であった。これが記録上最初のFootprintsの発見ではあったものの、しかし研究員はその痕跡を、通常の足跡と同じように石膏取りにて記録し、持ち帰ってしまったのである。しかしながらこれは当時Footprintsの存在を知りえなかった彼にとって仕方のないことであったのは言うまでもない(いったい誰が、その足跡を「生物」だなどと考えるであろうか!) これは他の研究者についても同様であり、せいぜいがUFOの目撃情報に関連する事象である、「ミステリーサークル」との関連性を考える程度にとどまっていたのである(しかし、現状のAtmospheric beastsとの関連性を考えれば、あながち誤った見解でもないかもしれない)。

 さて、Footprintsとの関連が疑われる怪異、事象について、九州に伝わる「塗り壁」が関連していることはすでに述べた。この伝承が、少なくとも江戸時代ごろから存在していることからそれ以前よりかれらが存在していたことは確認できる。しかし、さらにもっとも古いと思われる事象として、「オーパーツとしての人間の足跡の化石」というものが存在する。これは、本来人類が誕生していなかったとされている年代の地層より、なぜか人の足跡に酷似した化石が発見される、というものである。そしてこれは、初めて我々がFootprintsの存在を発見することとなる、ある種突破口となった存在でもある。

 こうした「人間の足跡の化石」として有名なのは、ユタ州にて、三葉虫の上にかぶさるようにして発掘された「三葉虫を踏んだ足跡化石」や、恐竜の足跡化石の横に、まるで並んで歩いたかのように存在するテキサス州にて発掘された人間の足跡化石といったものが有名であるが、今回Footprints 発見の契機となったのは1975年、フロリダ州にて発掘された「トラベラーズ・ソール」と呼ばれる足跡化石である。この化石は他の事例と比べると、形こそ人間の足に近いものであれ、いたって平坦な「底」を持つものであり、偶然そのような形になったといわれても何ら違和感のない程度のものであった。

 我々が興味を持ったのは、その靴底状の窪みではなく、そのつま先部分にかすかに残された奇妙な構造体の化石であった。 いくつかの体節と線状の構造体とで構成されるそれは、一見何らかの古生物の体の一部が残ったもののようであったが、特徴的であったのは、その縁をよく観察すると、まるで足跡化石の「底」がはがれ、そこから先述の構造体が覗いているように見える点であった。常識的に考えれば、それは単に偶然その位置に付着したものと捉えてしかるべきものではあったが、しかし、このことを、過去「イモヌスミ」の調査において発見された奇妙な「足跡」と世界中の未確認動物の「足跡」発見事例と結びつけ、加えてそれらを「足跡型の生物」であると考えたのが不可視生物研究家ジェイムズ・フェンツであった。当の彼をして「何かが憑いたとしか思えない」この主張は、当然研究者の間でも信じるものはそう多くなかったものの、さらなる綿密な調査、及び今まで研究対象としてこなかった未確認生物の「足跡」という存在を新たに調査することによって、最終的にはかれらの姿を拓本に収めることとなったのである。(記録方法のヒントとなったのは、その契機となった足跡化石であった。即ち、我々は質感擬態を行う上皮をはがし、体が消失しないうちにその内部構造を記録したのである)また、その結果、件の足跡化石についても、「Shoes 」と名付けられた種である可能性が濃厚であることが判明している。

 これまで「間接的証拠」として扱われてきた「足跡」に対し、捕獲対象としての「生物」という扱いで再度調査を行っていくことで、我々はいくつかのFootprints拓本採取に成功した。しかし、そもそもこうした足跡の発見報告自体が貴重なものであるうえ、見つけ出した足跡についてもすでに「窪み」だけの状態であったり、はたまた既知の動物の本物の足跡であったりする場合も多く、まだその完全な記録数についてはそう多いものではない。ゆえに、我々が「Footprints」であるとして調査しているものが、実際には真に「未確認動物が残した足跡」である可能性も依然存在しているといえるのである。

  「トラベラーズ・ソウル」の全体像、および問題となった先端の「剥がれた」部分。

推測としては、何らかの理由から上皮の一部が破損したことでその部分だけ質感擬態が解け、内部構造の露出による死滅・消滅までの一瞬のうちに泥などが積もり化石化したものと考えられる。

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