top of page

・Footprintsの虚像と「未確認動物」

 

 さて、これまでFootprintsの持つ様々な特徴について述べてきたが、もうひとつ、かれらには「虚像」と呼ばれる特殊な能力を有していることが報告されている。これは群体を形成しているFootprintsによって作り出される「幻像」であり、群体へ近づいた者たちに幻覚症状として作用する。目撃者には多くが地面に直立する「立像」として映り、その姿はあたかも地面に広がる足跡の「持ち主」のようであるともいわれている。

幻覚と言ったように、かれらの「虚像」は例えばSF映画のホログラムのように客観的に出現するものではなく、それゆえに目撃者が指し示すところをカメラなどの映像機器で撮影したとしても何も記録されることはない。つまりは目撃者それぞれがめいめいに立像のような幻覚を見ている状態となるわけで、当然ながらその証言をとってもその「立像」の姿かたちはそれぞれ異なったものである。しかし、一方でそうした証言はそのFootprintsの種類に応じて、形状、ないし色などのいくらかの点で一致するような場合が多い。これはFootprintsが種ごとに微妙に異なった幻覚物質等を発生させていることに由来すると思われる。(しかしながら、ある程度バラバラなものとはいえ複数人に対しある特定の幻覚を見せることができるというのは恐るべき能力ではある。もしかれらの発生させる幻覚物質の研究が進めば、ともすればフィクションのような「自由自在に幻覚を見せることのできる薬品」などを作成することも可能かもしれない)

 この「虚像」の能力については、ほかの特徴同様自衛のための手段ではないかと考えられている。例えば、仮に動物であっても似たような幻覚が引き起こされるのだとすれば、近づいてきた際に急にその姿を現す、というだけで動物たちは驚いて逃げ去るであろうことは容易に想像がつく。これは概ね人間においても当てはまるであろう。中にはその虚像を追おうとする者もいるかもしれないが、その場合、目撃者は地面に広がる足跡を追ってさらにその先へ進んでいくこととなり、その結果やはりFootprintsは目撃者をやり過ごすことができるという訳である。(もっとも、そこからさらに「証拠品として足型をとる」という行動を起こしうるものが存在することは予測できなかったようであるが)そもそも、近づいてきたものが虚像の方へ注意を向ける、という時点で地面に存在するかれらから「視線をそらさせる」という防衛手段が成立するのである。

 この能力こそが、今まで幾度も触れてきた、Footprintsを未確認動物の正体とする説に関連してくるのである。

 雪男やネッシーをはじめとする世界中に伝わる未確認生物について少しでも知識を有した人物であれば、かれらが「足跡をはじめとする」間接的な証拠ばかりが見つかるのに対し、当の未確認生物そのものがいつまでも発見されないという事実に疑問を抱いたことがあるかと思われるが、仮にこれらの生物たちの多く(多く、と書いたのは、上記に述べた証拠のほかにも「写真」に記録された例というものが多く存在するからである)がFootprintsであればこうした疑問は解決できる。つまり、これまで「存在の証拠」とされてきた足跡こそが未確認生物そのものであり、「足跡の持ち主」と考えられてきた怪物たちの姿は、この足跡型生物が発生させた幻覚である、ということである。だとすれば、単なる幻覚に過ぎない「持ち主」たちが発見・捕獲されない現状も当然であるといえるだろう。

 実際に、こうした未確認生物たちの中には我々の常識では考えられないほどの神出鬼没性を持つものが多く存在している。例えば、イギリスにてその存在が報告される「モギィー(エイリアン・ビッグ・キャット)」は大型のネコ科動物を思わせる生物であるが、驚くべきことに瞬間移動(テレポーテーション)能力を有しているといわれており、その力によってこれまでの捕獲作戦の網を掻い潜ってきたといわれている。アメリカで目撃される獣人タイプの未確認生物「グラスマン」も、「姿を消す」特殊な能力を有しているといわれているのである。そもそも、未確認生物の多くが先述した「エイリアン・アニマル」説を正体に関する一説として挙げられている通り、幾度も大規模な捕獲作戦が行われてなお、その姿を我々に見せない神出鬼没な存在として報告されているのである。

 また、未確認生物としての記述ではないものの、このFootprintsと虚像の存在という点においては日本に伝わる「塗り壁」という怪異も注目すべき存在である。「塗り壁」とは九州地方などで伝わる怪異で、夜道を歩いていると突如として巨大な壁が立ちはだかり、先へ進めなくなるというものであるが、これの対処法として挙げられるのが「杖で足元を払う」と「煙草を吸って落ち着く」というものである。こうすることで壁は消え、先に進むことができるようになるといわれている。この2つの対処法が、ともに壁それ自体ではなく「足元」に関連したものであることに注目されたい。例えばこの壁がFootprintsによる「虚像」であり、その犯人が足元にいるFootprintsであるとすれば、「杖で足元を払う」ことで衝撃を受けたり、または煙草の火が地面に落ちたりすることで地面にいるFootprintsが破壊され死滅し、結果として「虚像」である「巨大な壁」が消失したとすればどうであろうか。つまり、この「塗り壁」という怪異は、「巨大な壁」を「虚像」とするFootprintsとの遭遇とその対処を現したものである可能性が非常に高いといえるのである。さらに、一部の伝承ではこの「塗り壁」の正体を狸の化けた姿であるとするものがある。我々は現在、伝承のとおり「巨大な壁」を虚像とするFootprintsの採取に成功しているが、驚くべきことにその姿は狸の足跡に酷似したものとなっているのである。つまり、「巨大な壁」の消失に成功した人物が、足元に残るFootprintsの窪みの残骸を見たことで、その正体を狸によるものだと認識したという可能性も大いに考えられるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・ヒマラヤに生息するFootprints、「Yeti」の虚像目撃者2名によるスケッチ。それぞれ形状や全体のイメージなどは異なるが、「毛に覆われた物体」という点では2人の幻覚の内容は一致しているといえる。

bottom of page