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・歴史

 

神秘的、あるいは不可思議的な飛行物体の遭遇譚、目撃譚といったものについては、先ほど述べたとおり古今東西、ありとあらゆる地に存在しており枚挙に暇がないわけであるが、それら全てがAtmospheric beastsであると断言ずることは今の段階では不可能である。当初怪奇現象として騒がれたこれらの存在が、後になって科学によって解明可能な代物であったり、トリックを用いた偽物、あるいは嘘であると判明することも多くあるのである。

よって、ここではそのような未確認の情報を列挙していくよりも、そのなかでAtmospheric beastsと関連深いと思われる事象、およびかれらの発見と研究の歴史について説明していきたい。

 記録に残るもので最も古いAtmospheric beasts遭遇譚であると認められるものは、江戸時代に日本で作成された「三州奇談」と呼ばれる加賀地方の奇談集に納められた「火光断絶の刀」という怪異譚である。この物語で、小原長八という人物は夜間火の玉に遭遇する。しかし、彼が切りかかったところ、火の玉の正体は赤く透き通った、ねばねばした糊か松脂のような物体であったというのである。この、通常の飛行物体目撃譚に留まらず、それが軟体生物であったという記述がAtmospheric beasts遭遇譚であると考えられている所以である。さらに、その後長八がこの現象について古老に尋ねた際、「海洋に住むクラゲというものは、時に風にのり飛行することがある。これは暗闇においては火のように見える」と返答されたことについても、その考えを更に補強するものであるといえよう。

 他にAtmospheric beastsの特徴がみられる事件としては、1950年代フランスに出現したとされる、「エンゼルヘアー」と呼ばれる糸状物質は大勢の人々に「目視された」という違いはあるものの、発見後短時間で消失してしまったという証言が為されており、またUFOの出現と同時に降り注いだ、とされていることから、かれらとの何かしらの関連が疑われている。(この存在については後に同一のものと疑われる物体の拓本取りにも成功している。)空中より飛来するとされるゼリー状物質(スターゼリー)についても、これと同一の存在ではないかとして現在研究が進められている。

 こういった著名な例を除いたとしても、透明又は半透明、神出鬼没、自分にしか見えないといった、Atmospheric beastsの生態の一部と合致するような未確認飛行物体等に関する記録や目撃情報自体は多数存在する。しかし、トレヴァー・J・コンスタブル氏が、UFOなどの飛行物体の正体として成層圏に存在するアメーバ状のプラズマ生命体「クリッター」の存在を提唱するまでは、こういった飛行物体を生物とする考え方も主流なものではなく、また様々な空中浮遊物を同一の存在に求めることも我々は為しえなかったに違いない。こういった点からも氏をAtmospheric beastsの父とするものは多く、事実彼の提言からかれらの存在を探求し始めた者も大勢存在する。最初のAtmospheric beasts発見者となった人物も、そういったものたちの一人であったのである。

 1999年春、アマチュアUFO研究家であるM.ブラズナはフランス郊外にて、「可視と不可視の狭間」を行き来するような、奇妙な飛行物体がゆらゆらと降下してゆくところを目撃、捕獲に成功した。当時の時点ではかれらに関する情報があまりにも少なかった為、その個体についてはろくな記録も取られぬまま消失してしまったものの、かれのその体験は同じような存在を研究している人々に衝撃を与えることとなったのである。(ちなみに、この発表については奇しくもかのノストラダムスの予言で話題がもちきりの時期であり、「降下した」未確認存在という内容が世間にパニックをもたらす危険性があったためとあるネットワーク内のみで秘密裏に行われた。なお、このとき捕獲された個体については後に同種と見られる存在の拓本取りに成功。ノストラダムスの予言にちなみthe Great、つまり大王と名付けられた)不思議なことに、この発表以後、世界中の研究者より同様の飛行物体の証言が数多く挙げられるようになったのである。のちに「大発見」現象と呼ばれるこの事件について論理的な説明を行うことのできるものは存在していない。「見る」という意識を彼らに向けることが、かれらの隠蔽能力に何らかの影響を与えるのだと主張するもの、もともとは完全な隠蔽力を持っていたかれらが、世界的な工業化に伴う環境の変化から徐々に弱体化し、我々の前に姿を現すようになってしまったのだとするもの、ノストラダムスの予言との関連性を主張するもの、またはそもそもかれら自体が近年になって出現し始めた存在であるとするものなど、自身なりにその解釈を行おうとする者は大勢存在するものの、どの説についても大きな矛盾点が存在し、有力な説とはおよそ言い難い。ともあれ、この事態により、我々Atmospheric beastsの本格的な発見、及びその調査研究が行われることとなったのである。その採集、及び記録方法の経緯については次章で詳しく述べるが、拓本による記録が行われるまではかれらの「消失する」という特徴への対応は非常に困難なものであり、暫くの間は研究報告の殆どが研究員たちの目撃情報およびスケッチ、というまともな研究機関や学会からそっぽを向かれて当然な状況(これについては今でもそう変わらぬものであるとおもうが)にあった。結局、現在の方法で辛うじてかれらの姿を記録できるようになるまで、実に多くのサンプル、および時間の費やすこととなったのである。

 現在はサンプルの採集・拓本取りを中心に、かれらの生態予想、およびかれらの特性への対抗策研究を並行して行うような状態で研究が行われる。研究当初はあらゆる技術や器具を用いて徹底的にかれらの詳細を探ろうとする動きも大きかったが、それらがまったくの徒労であったと判明した現在ではその動きも縮小・鎮静化し、現在は机上での議論が中心となってしまっている。

 

 

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